PHV、EV車の“近い未来” ～パリモーターショーでのトレンド～

コラム （2016/10/14）

このほど、パリで開催されていたモーターショーで、数多くのメーカーがプラグインハイブリッド（PHV）や電気自動車（EV）を公開したが、その背景にあるものは一体なんなのか？ 各社が発表した車両を紹介しつつ、近い未来における自動車事情を探ってみたい。

・ヨーロッパブランド、航続距離の延長へ
ドイツ･オペル社がモーターショー会場で公開したのは、小型の5人乗りハッチバックの電気自動車（EV）「Ampera-e」。オペルの親会社であるアメリカ･GM社がリリースするEV車「Chevrolet Bolt」をベースにしており、その欧州仕様車であるといえる。会場では価格が明らかにされていなかったが、予定では、来年春の発売になるという。

現在、 欧州の燃費は「100km 走行するために必要な燃料（リッター/100km）」 で表されているが、その試験方法として市内走行と高速走行の両方を代表するモードとして NEDC（New European Driving Cycle）によって試験を行っている。そして、この「Ampera-e」は、1度の満充電でなんと、500km以上の走行が可能になっている。この数値が、EV車でありながら、各ユーザーが決してセカンドカーではなく、メインとして活用できる車両としてヘビーユーズできるということをアピールしているのは、言うまでもない。

一方、フランス･ルノー社では、同社の小型電気自動車「ZOE」を改良し、1回の満充電で400km走行できる改良車をモーターショーで初めてお披露目している。同社によると、発売開始は今年中としている。ZOEは、2012年にリリース。容量22kWhのリチウムイン電池を搭載する。現在、 NEDCモードで240km走行可能としており、実際には170km走行が可能と報告されている。改良車では、搭載するリチウムイオン電池を容量41kWhに変更したところ、結果的に航続距離を6割以上伸ばすことに成功した。これにより、1回の満充電で300kmは日常的に可能だとしており、その電池は韓国LG Chem社が提供する。

そして電動車に特化した「i」ブランドを持つドイツ･BMW社は、量販車の「i3」とプラグインハイブリッドのスポーツカー「i8」の新型車を2016年7月に発表。すでにi3は世界で4500台近く販売済みではあるが、今回は、航続距離をこれまでの190kmから300kmへと伸ばした。これによって、ヨーロッパ国内での受注を7000台確保したと伝えている。


・新ブランドの立ち上げ、価格の抑制も
高級路線のドイツ･ダイムラー社は、2025年までに10車種のEV車を市場に投入する計画を発表。新たなブランド「EQ」を立ち上げると、パリモーターショーで明らかにしている。「2025年までに当社の世界販売台数のうち15～25％をEVが占めるようにすること」も発表した。まず、皮切りとして「EQ」ブランド量産車として、SUVタイプの車両を「3年以内に発売」と宣言。価格は同社の5人乗りSUV「GLC」と同等にする考えだとしており、現地価格で約4～5万ユーロ（日本価格でおよそ452万～565万円）あたりを目論む。もはや、ブランド車が販売するEV車、PHV車がズバ抜けて高級、というイメージも薄らいでいる。

また、ヨーロッパでは大衆車としての認知度が高いゴルフを発売するドイツ･フォルクスワーゲン社は、同モーターショーでコンセプトEVカー「I.D.」を発表。同社によると、「1回の満充電で600km走れ、毎日の足として使えるのが、我々が提供するI.D.だ」とアナウンスした。さらに、その車両価格帯を、同社のゴルフ･ディーゼル仕様車と同価格にするとした。「ビートル」、「ゴルフ」と同社の「顔」的車両が印象的なVW社。同社は「I.D.」が、ビートルやゴルフに次ぐ、革新的なモデルになると位置づけし、「クルマをスマートに利用する時代」にふさわしい車両にしたいと訴求した。また、I.D. には、自動運転モードを搭載予定で、それは2025年からともいわれている。また、その頃には、同社の販売車両のうち、20～25％は、EV車になるだろう、と予測した。

近い未来における自動車のあり方が、急速な変化を遂げている過程にあることは違いなさそうだ。