高速道路、深夜割引見直しへ

コラム （2023/02/27）

深夜割引が適応されてきた高速道路の料金が見直されることになった。1月20日、国土交通省および東日本・中日本・西日本高速道路株式会社が揃って発表したのは、対象時間を拡大する一方で走行距離に合わせて割引を行うというものだった。その狙いはどこにあるのか。

・なぜ見直しを？
今回、見直しが発表された深夜割引。これまで同様、ETC利用が割引に必要な条件であることに変わりはない。まずは、現在適用されている深夜割引から説明しよう。今は午前0時から4時に高速道路を利用すれば、利用したすべての区間において料金が3割引になる（高速道路に乗った時間が午前0時前であったり、下りた時間が午前4時を過ぎていても、走行した全区間が割引対象となる）。ほんの少しの距離でも適応されるため、午前0時を過ぎてから料金所を出ようと時間を調整するドライバーが後を絶たない。とくに商業用トラックが実施する傾向にあり、毎晩のように出口で渋滞を引き起こす原因となっている。時間調整を行うためにサービスエリア等で滞在することもあり、ドライバーの長時間労働にもつながっていると考えられる。比較的空いている深夜に高速道路を利用してもらい、沿道の環境を改善するおとを目的としていたが、割引を受けるために結果として無駄な待機時間が発生し、本線料金所はじめ、SAやPAなどで割引適用待ちのクルマが滞留。結果として長時間労働を誘発するのであれば本末転倒の話といえるだろう。

今回、割引適用の条件を変更するにあたり、新たに導入するのは対象時間の拡大。 これまでの4時間に対し、変更後は午後10時から午前5時の7時間となり、3時間延長される。一方で、割引が適応されるのは、この7時間に限られる。どうやら時間が限定されることにより、時間調整や待機がなくなると想定したようだ。また、長距離利用者の負担軽減措置も新たに見直され、今は走行距離が100km超から200km 以下を25%引、200km超を30%引としているが、見直し後は前記に加え、400km超から600km以下を40%引、600km超から800km以下を45%引、800km超を50%引にし、長距離逓減を拡充。また、この引き下げは昼夜を問わず全ての通行車両に適用するとしている。

なお、割引適用時間帯の変更は令和6年（2024年）中をめどに見直す予定であり、今後、具体的な割引の見直し運用開始時期が検討されることになる。国交省が高速道路会社と検討を重ねた後、2024年度中に導入される予定だという。なお、見直しから5年程度は、激変緩和措置も適用する予定があるとしている。この場合、深夜割引時間帯に一定以上の距離を走行し、かつ1000km以上走行した場合は1000kmを超えて走行した分を深夜割引の対象とする距離に加算するとしている。一方で、午後10時台に流出（下りる）場合は、深夜割引の割引率を3割から2割に縮小されるという。

・新制度導入によって生じる懸念は？
これまでの割引はETC搭載車であれば、自動的に適応されるものだったが、新たな制度が導入されると、「ETCマイレージサービス」または「ETCコーポレートカード」への後日還元型による割引になるといい、適用するための加入と事前登録が必須となる。つまり、出口料金所等では割引適用前の通常料金が表示されるというわけだ。また、見直し実施にあたって割引適用時間帯の走行分を把握するため、高速道路上へのETC無線通信専用のアンテナ設置やシステム改修等を行う必要もあるとのこと。つまり各アンテナから車両ごとの通行記録を収集し、それらのデータを基にした割引対象距離によって深夜割引の実質割引率を算出することになる。だが、新たなアンテナ設置等に必要とされる半導体は現在世界中で品不足が続いており、新制度導入時期に多かれ少なかれ何らかの影響を及ほ?すことになるやもしれない。

また、深夜走行分だけが割引対象になることから、新制度の適用が新たに深夜走行を助長することになるのでは？ と疑問視されていることも事実。つまり、今は走行時間枠に割引適応時間帯が入っていれば時間を気にせずに走行できていたが、7時間という枠が固定化されるため、この時間枠でできる限り距離を稼ごうと加速するドライバーが出てくる可能性も否めないというのだ。安全運転に影響が出るような制限はあってはならないはずだ。このため、割引対象距離に上限を設けることも検討するという。

もともと深夜の走行料金を割り引くことで日中の混雑を緩和するメリットがあったが、新制度でさらに日中の渋滞緩和が助長されるかどうかは、導入後状況を見てからの判断になりそうだ。