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■復活の糸口になるのか? 日産が新型EVリーフを発表

コラム

(2025/10/13)

去る10月8日、日産自動車が新型リーフの国内仕様車を発表した。現在、経営再建真っ只中にある同社だが、復活を遂げるための世界戦略車に位置づけられているのは言うまでもない。国内市場での需要は果たしてどこまで伸びるのか?

・初代から15年。確実に進化した1台に
同社を代表する電気自動車「リーフ」は8年ぶりのフルモデルチェンジ。今回が3代目となる。2代目はハッチバックモデルだったが、一新されてスポーツ用多目的車、いわゆるクロスオーバーSUVへ。現行車より全長が短く、全高が低くなった一方で、全幅は広くなっている。一方、EVとして重要なスペックともいえる航続距離は現行車の5割増に。発表会の場において、「徹底的な空力性能の向上に加え、高性能バッテリーや効率化したパワートレインを搭載することで、WLTCモードで最大702kmという航続距離を達成した」と長距離移動に対する不安解消の実現を強調した。同社によると、150kWの急速充電器を使用した場合、35分で充電量は10%から80%まで回復するとしている。

初代リーフが登場したのは、2010年。当初から日本はじめ、アメリカ、ヨーロッパなどを対象にしたグローバル戦略車として市場に投入された。当然ながら当時の日本国内はガソリン車が主流で、ハイブリッド車が徐々に幅を利かせはじめた時代。なにしろ充電に対する不安が先行するのがEVのイメージだった。また、航続距離は200kmと短いため、ガソリンが不要であっても頻繁に充電が必要になるという”本末転倒”の状態。当然ながら充電スタンド等のインフラ設備も整っておらず、車体価格もガソリン車やハイブリッド車の比にならないほど高価であり、正直なところおいそれと手が出せるものではなかった。7年後には2代目をリリース。2018年1月には、初代モデル発売以来、グローバルで累計およそ30万台を販売したとアナウンスされたほか、同年の4月には初代モデルからの国内累計販売台数が10万台突破を果たしたことが報告されている。

今回、発表された3代目は、これまでの450kmから一気に702kmまで伸びたが、これは電池容量が3割増したことが関係する。徹底的な空力性能の向上のため、車体の屋根から後部にかけての角度はより滑らかとなり、抵抗を軽減。また、冬場の航続距離低下の課題にも取り組み、クルマ全体の冷熱システムを一括制御する「エネルギーマネジメントシステム」を新たに採用したという。「自宅で充電中に発生した熱をバッテリーの昇温に活用したり、モーターやバッテリーの熱を暖房に使うなど徹底的な熱効率向上が図った」とも言われており、”創意工夫”の跡が見て取れる。様々な進化を遂げるなか、協業の関係がある三菱自動車においては、得意とするPHEV技術を日産に提供する予定があり、2026年後半にはこの新型リーフをベースにしたOEM供給車を北米市場に投入計画を発表。日産としてもプラス材料となるに違いない。

・気になる価格。補助制度は?
先述のように、日本のEV市場はまだまだ先がはっきりしないのが現状。ガソリン車とハイブリッド車が席巻するなか、高級路線のEVが都心部で目につくものの、主流となるにはまだ時間が必要だと感じる。

3代目の車両価格は518万8700円(消費税込み)から599万9400円。2代目から価格はほぼ据え置き状態だ。近年、新車価格が軒並み高騰していることを考慮すれば、この価格設定は非常にありがたい。とはいえ、同額で購入できる他社の車両と比較した場合、どの程度のユーザーの食指が動くのだろうか。まだハードルが高いのではないかと考える。

現在、日本ではEV購入時に補助制度を設けているが、同社によると補助金は現在申請中とのこと。あくまでも暫定の話だが、旧型車と同額程度の補助金が受給できたと仮定すれば、購入価格は430万程度からになるとしている。また、来年2月頃には、普及モデルのリリースも予定されている。こちらはさらに安価で350万円程度になるとのこと。果たしてEV購入に向けての動機づけとなるだろうか。

現在、経営再建が待ったなしの状態にある日産。今回の3代目リーフが国内市場に限らず、世界戦略車として先陣を切って販売される1台であることには間違いない。社運が掛かる重要なポジションのリーフが救世主となるか否か。EVでは中国メーカーが台頭する時代。まさに荒波へと漕ぎ出すリーフの運命に注目が集まる。

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